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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)189号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の当否を検討する。

1 成立に争いない甲第二号証の一(本件発明の特許出願公告公報)及び同号証の二(同公報の補正の掲載)によれば、本件発明は、コンクリートなどの混合に用いる二軸強制混合機に関するものであつて(公報の補正の掲載第一九行及び第二〇行)、従来の二軸強制混合機の二本の混合軸は連結ホイールによつてシンクロナイズされるのであるが、右連結ホイールは混合機の基礎とは別個に設けられた基礎に据え付けられた二個の駆動装置によつて駆動されるため多大の空間及び費用を要すること、及び、スタフイングボツクス構造による混合槽のシールは保守が非常に困難であることを従来技術の問題点として把握し(公報第三欄第二行ないし第一〇行)、右問題点を解決するために、混合槽を自己支持構造かつ一体形のコンパクトな構成(公報の補正の掲載第六行、公報第三欄第一一行及び第一二行)、すなわち、「駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁」のいずれもが、混合槽に直接取り付けられて一体形をなす構成(公報第三欄第一七行ないし第一九行)を採用し、この構成によつて、構造が堅牢かつコンパクトで確実な機能を有する二軸強制混合機を創案したもの(公報第六欄第七行及び第八行)と認められる(別紙図面一参照)。なお、右「駆動装置」とは、前掲甲第二号証の一によれば、「一個又は二個のモータ4、混合軸31に取り付けられた二個のウオーム歯車減速機9、10、二個の取付台11、12」から成るものをいうと認められる(公報第三欄第二八行ないし第三一行)。

そうすると、前掲甲第二号証の二によれば、本件第一発明の特許請求の範囲には「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ」と記載されているほかは、駆動装置の取付け方法が明記されていないことが認められるが(公報の補正の掲載第六行及び第七行)、発明の詳細な説明全体の趣旨に徴すれば、本件第一発明は、駆動装置、すなわち「モータ及び二個の減速機」が、いずれも、混合槽に直接取り付けられ、混合槽と一体形をなしている構成を要旨とするものであると認定することができる。

2 ところで、審決は、本件第一発明と引用例1記載の考案(別紙図面二参照)は、本件第一発明が混合機の構成部材である「駆動装置(モータ及び減速機)、混合軸とそのシール装置、混合具、ローラ状の排出用滑り弁」のいずれをも混合槽自体に支持させて一体化する構成を採用しているのに対し、引用例1にはモータを含む駆動装置を混合槽自体に支持させて一体化する構成が記載されていないとの一点においてのみ相違すると認定した上(原告も、右認定自体は争つていない。)、引用例2の図5aには密閉容器に収納した減速機を混合槽の正面下部に、モータを混合槽の側面上部にそれぞれ取り付けて一体化した構造の混合機が示されていると認定して、結局、本件第一発明の進歩性を否定したものである。

そこで、成立に争いない甲第三号証によつて引用例2に示されている技術的事項を検討するに、引用例2第一七頁の図5は「密閉容器に収納された減速機」と題され、図5aは「二軸槽ミキサーの場合」と題されている写真であると認められ、かつ、同頁左欄第二四行ないし第二七行には「ほとんど常にモータはその動力を減速機を介して与える。右減速機は、大部分が油槽の中で回転し(図5)、モータの回転数を混合具の回転数まで落とす役割を有する」と記載されていることが認められる。したがつて、図5aの左半分に表示されている半円形のものが減速機を収納した密閉容器であり、右密閉容器の右上から右方へ伸びるように表示されている円筒状のものがモータであると理解することができる。しかしながら、図5aのどの部分がミキサーの槽を表示しているのか、引用例2の記載からは全く明らかにし得ないから、図5aには「密閉容器に収納された減速機を混合槽の正面下部に、モータを混合槽の側面上部に、それぞれ取り付けて一体化した構造」が表示されている旨の審決の認定は、合理的根拠を欠くものといわざるを得ない(付言するに、審決の「モータを混合槽の側面上部に(中略)取り付けて」との記載に照らすと、審決は、図5aの左半分に示されている半円形のもの、すなわち、減速機を収納した密閉容器を、混合槽と誤認している疑いが濃厚である。)。

この点について、被告は、本件第一発明は「駆動装置(モータ及び減速機)が何らかの態様で混合槽1に支持され、これと一体化している構造」を要旨とするものにすぎないところ、引用例2の図5aの減速機(その側面上部にモータが取り付けられている。)は混合槽に軸承された混合軸に着脱自在に設けられていると共に混合槽と共通の基礎に固定されており、このような構成も前記「駆動装置(モータ及び減速機)が何らかの態様で混合槽1に支持され、これと一体化している構造」に該当すると主張する。しかしながら、本件第一発明が、駆動装置、すなわちモータ及び二個の減速機のいずれもが混合槽に直接取り付けられ、モータ及び二個の減速機がいずれも混合槽と一体形をなしている構成を要旨とするものであると認定すべきことは前記のとおりであるから、被告の右主張を採用する余地はない。

3 以上のとおり、審決は、引用例2に表示されている技術的事項を誤認し、これを前提として本件第一発明と引用例1記載の考案の相違点を判断したものである。それゆえ、右誤認が、本件第一発明(ひいては、本件第二発明ないし本件第四発明)の進歩性を否定した審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は、違法なものとして取消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当であるからこれを取り消すこととする。

〔編注1〕本件発明の要旨(別紙図面一参照)は左のとおりである。

1 特にコンクリート、ビチユーメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であつて、混合槽を備え、該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、該混合具の周縁部が描く円は互いに交わり、さらに該混合具の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機において、

混合槽1は自己支持構造であり、駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取り付けられていることを特徴とする、二軸強制混合機(以下「本件第一発明」という。)

2 前記混合機の駆動装置5は、取付位置調整可能としたモータ4、混合軸31に取り付けられた二個のウオーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、前記ウオーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カツプリングにより接続することを特徴とする、特許請求の範囲第一項記載の二軸強制混合機(以下「本件第二発明」という。)

3 前記駆動装置5の取付台11、12の支持力の作用線が、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bとほぼ平行にあることを特徴とする、特許請求の範囲第二項記載の二軸強制混合機(以下「本件第三発明」という。)

4 二つの取付台11、12は、連結ロツド22、23、24及び26により混合槽1に固定された支持ブラケツト25に共に連結されていることを特徴とする、特許請求の範囲第三項記載の二軸強制混合機(以下「本件第四発明」という。)

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙図面一

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙図面三

<省略>

(他は省略)

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